学名:Solanum aethiopicum L.
科名:ナス科
「木になるかぼちゃ」ソラナムパンプキン
10月のハロウィン時期になると、枝に実った小さなかぼちゃを見かけたりしませんか?これは日本では「ソラナムパンプキン」と呼ばれる園芸作物です。昨今はハロウィンが大変な盛り上がりを見せ、ハロウィンの市場規模の推定値は約1200億円とも言われており、バレンタインデーなどの他の祝日と同様の規模に近づいています。
この時期に合わせた商戦も活発ですが、固定されたイメージが強いですよね。植物で言えば「黄色のかぼちゃ」だったり「黒コスモス」の様なオレンジと黒の「ハロウィンカラー」が推奨されています。一方で、今年のハロウィンでは白やパステルカラーが多用されたとも言われており、毎年雰囲気は変わることから、ハロウィンは新たな需要が生まれるイベントに代わり始めています。今回紹介するソラナムパンプキンもその特徴的な形から、「ハロウィン需要」を満たせるポテンシャルを持っています。
ソラナムパンプキンの作物的特徴
日本で「ソラナムパンプキン」と呼ばれる種は、主に「エチオピアナス」を指します。ナス科ナス属の植物で主にアジアや熱帯アフリカの植物ですが、果実が特徴的なので、観賞用として世界に広まっています。また、アフリカやヨーロッパでは食用としての需要もあります。エチオピアナスもたくさんの種類があり、その中でも果実が橙色の小さなカボチャ形になる種を日本では「ソラナム・パンプキン」(ナス属のかぼちゃの意)として観賞用作物として浸透し始めています。
「ソラナムパンプキン」という名前はいかにも学名っぽい呼び名ですが、これは通称であり、学名はSolanum aethiopicum L.と表記します。他の一般名としては、原種は果実がとても苦いので「ビタートマト」であったり、観賞用として「モックトマト」、「ガーデンエッグ」などと呼ばれたりもします。
特徴的な実は、種類ごとに食味が異なり、甘かったり苦かったりとバリエーションがあります。この食味を生かして多様な地域で様々な料理に使用されています。身近なところだと、タイカレーにも使われているようですね。栄養価も高く、生産性も高いことから、アフリカなどの途上国では重要な栽培種でもあるようです。
販売計画:「ハロウィン需要」
紹介したように、ソラナムパンプキンの需要は今後も伸びるポテンシャルを持っていますが、今は観賞用としての需要をしっかり取りに行く栽培計画を提案します。何と言っても「ハロウィン需要」は外せませんね。日本人にもハロウィンのイメージの中に「カボチャ」があり、マスコット的な立ち位置です。ソラナムパンプキンはその需要にマッチしますので、10月中のハロウィン商戦に合わせた出荷計画を立てててみてはいかがでしょうか。
栽培のポイント
直径3~5cm のくびれがある実を房状に付けます。色は熟すにつれて緑からオレンジ色に 変わっていきます。草丈は1m前後(ハウスでは1.5m以上)、株の広がりは0.7~1m前後。 生育適温が比較的高く、高冷地ではハウス栽培が主流となります。
播種後1ヶ月ほどで葉が5~7枚の高さ20cmの苗になります。これを畑に植えて100~120日で出荷となりますので(地域差・土壌差があります)、9月中頃からの出荷であれば、3~4月の播種となります。ナス科ですので、トマトなどと同様の栽培スケジュールでも良いかもしれません。すでにトマトを栽培された経験のある方は参考にされてください。
播種
2月~4月 発芽適温20℃前後 育苗箱を使用する場合は、播種後3 週間ほどで6~7.5cmポットに移植する。 プラグ育苗の場合は、50~72穴を用いると移植の手間を省ける。 育苗温度 夜間最低 10℃~15℃を確保する。日中は25℃
施肥
露地栽培で残肥料がない場合:元肥N:P:K=各1kg/a(成分量) 追肥は様子を見て与える。 残肥がある場合は1/3~1/2 などに調整する。
ハウス栽培で残肥がない場合は、元肥 N:P:K=各0.5kg/a(成分量)、追肥は無し。 残肥がある場合は無施肥とする。
定植
暖地・中間地の露地では晩霜の心配がなくなった、 5月上旬~下旬に定植する。 ハウスでは4~6月頃の定植となる。
定植間隔 株間40~60cm 1条植え 株間60~80cm 2条植え
栽培歴
弊社高冷地農場(標高1100m)での栽培歴
- 4月15日 播種
- 5月3日 ポット上げ
- 5月30日 ハウス内定植
- 9月末~ 着色始め
管理
7月~8月頃には開花が始まり、8月~10月には結実・着色となる。この期間には十分な日照が ないと結実不良が起こる。対策としては余分な葉を除去する、トマトトーン100倍液の散布など。 摘心:行わなくても分枝するが、本葉6~8枚程を残し摘心することでボリューム調整が出来る。 着色:実に光が当たったほうが早く着色が進む。大きな葉を取り除くと効果的。
収穫・出荷
着色してから収穫する。収穫して軽く葉が萎れてから触るほうが、トゲが気にならない。 葉や余分な茎を除去してから水揚げ、出荷する。
病害虫
連作は出来る限り避ける。アブラムシ類、コナジラミ類、ヨトウムシに注意する。
日本における「ソラナムパンプキン」の立ち位置
世界的に見ると、ソラナムパンプキンは食用としての役割が目立ちますが、日本におけるソラナムパンプキンの役割は「観賞用」が今は主です。もちろん海外でも観賞用としての用途はあり、その場合は「Pumpkin on a Stick」(スティックカボチャ)と呼ばれるそうです。特徴的な”カボチャ型”はやはり万国共通で目を引くのでしょう。
品種にもよりますが、鮮やかな黄色~オレンジ、朱色の実は目を引きます。その実にはカボチャの様なクビレが入り、形も目を楽しませてくれます。日本においては珍しい部類の作物でしょうから、人目を引くオーナメントとして機能します。現在は観賞用がメインですが、台木としての価値、栄養価が高いことから将来的には観賞用以外の需要も日本で出てくるのではないでしょうか。
今回の提案
今回はソラナムパンプキンの栽培について提案しました。ソラナムパンプキンは「ハロウィン需要」を狙える戦略作物です。コロナ禍では大々的なイベントは下火になったものの、ネット通販や贈り物は増加した背景があります。ソラナムパンプキンの様な品は、大きなイベントでも個人消費にもアプローチできるリスクの小さな作物と言えるかもしれません。ぜひ、ソラナムパンプキンの栽培をシミュレーションしてみてください。
ソラナムパンプキンの花言葉に関しては、こちらをご覧ください!